8月から9月に発生が増えるチャノホコリダニは、ナスの葉の奇形や芯止まりなどの被害を起こす害虫です。ここではナス栽培でのチャノホコリダニの農薬を使った防除や農薬を使わないその他の対策方法について説明します。
チャノホコリダニの特徴・被害
チャノホコリダニはダニの仲間で、クモの仲間、ホコリダニ類に属します。体長は0.2(雄)〜0.25(雌)mmと非常に小さく、肉眼で把握するのは困難なレベルです。
幼虫の時は乳白色で、成虫は淡黄緑色(透明なアメ色)です。産卵は1日あたり1~5個で、1~2週間にわたり産卵し、合計では、15~30個の卵を産むとされています。蛹を経ない不完全変態で、成長サイクルが早く、大量発生しやすいのが特徴です。
高温でやや多湿を好むため、露地栽培では8月~9月、促成栽培では定植後の9月~11月に発生しやすくなります。初期の症状は、新葉の生長点のあたりの葉がねじれて萎縮し奇形葉となり、葉が小さいまま心止まりとなります。数株から始まり、隣接株へとどんどん広がります。
花や果実にも寄生し、果実は灰褐色のさめ肌状に変色し奇形が起きたり、成長を阻害します。



画像出典:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ナス栽培 チャノホコリダニの農薬を使った防除方法
チャノホコリダニの防除は、化学農薬の効果が高く、施設栽培では予防として天敵製剤(スワルスキーカブリダニ剤)も有効です。
発生初期に早期発見することが最も重要です。チャノホコリダニは肉眼では見つけにくいため、被害株がないか注意深く観察し、被害があるようなら拡大鏡などを使って、チャノホコリダニが寄生していないか確認しましょう。
発生している場合は、速効的で,効果の高い農薬を7日ごとに2回連続散布します。化学農薬を選ぶ際には、他の病害虫が発生している場合には同時防除できるものを選びましょう。天敵製剤を使っている場合には、天敵に影響のない農薬を選ぶ必要があります。
チャノホコリダニは、生長点やヘタの隙間などに寄生していることが多いので、農薬はていねいに十分な量を散布するように心がけましょう。部分的に散布する際には、被害株だけでなく隣接している株にも丁寧に散布をします。
ナス栽培 チャノホコリダニに適用のある農薬
散布時期 | 農薬名 | 希釈倍率 | 使用液量 | 使用期間 | 使用回数 | 使用方法 | IRACコード | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
害虫発生期 | モベントフロアブル | 2000倍 500倍 | 100〜300㍑/10a 50mL/株 | 収穫前日まで 育苗期後半〜定植当日 | 3回以内 1回 | 散布 灌注 | 23 | 優れた浸透性があり灌注処理も行える殺虫剤です。 アザミウマ類、コナジラミ類,アブラムシ類、ハダニ類との同時防除が可能です。 |
害虫発生期 | アファーム乳剤 | 2000倍 | 100〜300㍑/10a | 収穫前日まで | 2回以内 | 散布 | 6 | マクロイド系の新しいタイプの殺虫剤で、速効性にも優れた殺虫剤です。 アザミウマ類、ハスモンヨトウ、オオタバコガ、コナジラミ類、ハモグリバエ類、ハダニ類との同時防除が可能です。 |
害虫発生期 | アプロードエースフロアブル | 1000倍 | 100〜300㍑/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | 21A、16 | 限られた害虫種にのみ殺虫効果が高いので、有用昆虫や天敵に影響が少ない薬剤です。 コナジラミ類にも適用があります。 |
害虫発生期 | カダンセーフ | 原液 | 発生初期 | – | 希釈せずそのまま散布する。 | – | 化学殺虫・殺菌剤不使用の食品成分由来の殺虫剤 家庭菜園などでなるべく農薬を使いたくない人にもおすすめ。 |
この他にもナスには多くの農薬が使えます。ナスのチャノホコリダニに適用のある農薬は下記からほぼすべての農薬が検索できます。
化学農薬以外の防除方法
天敵資材の活用
ナスのアザミウマ類やコナジラミ類対策に使われるスワルスキーカブダニ剤は、ナスのチャノホコリダニの防除では露地栽培でも効果を発揮しています。天敵製剤を使う際には、天敵製剤に影響のない農薬や散布時期について必ず確認しましょう。天敵製剤は届いたらすぐに散布する必要があります。製剤の入手時期についても注意が必要です。
散布時期 | 農薬名 | 適用害虫 | 使用量 | 使用時期 | 使用方法 | 特徴 |
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6月~ | スワルスキー | チャノホコリダニ | 250mL/10a(約25000頭) | 発生直前〜発生初期 | 放飼 放飼後の厳冬期の月平均気温が10℃を下回る地域 | 天敵製剤(スワルスキーカブリダニ剤) 低温時は活動が鈍ります。 |
稲わらマルチでカブリダニを増加させる
ある現場では、ポリマルチの畑に比べて、稲わらマルチをしている場合、チャノホコリダニの天敵であるカブリダニが増加するという結果が出ています。
これは、ワラ(藁)が土に接して分解が進む際に、その分解物をカブリダニが食べるために増加すると考えられています。有機農法で使用できる農薬が限られている場合などに活用してみたい方法です。
除草
毎年発生する地域では、周辺の雑草や茶、さざんかなどに発生したチャノホコリダニが移ってくることがあります。圃場の周りの除草もしっかり行いましょう。
農業アプリを活用しましょう
今まで農業日誌や栽培記録、ノートやパソコンで管理していたという人には、農業に役立つアプリを活用しませんか。農家webの「かんたん栽培記録」アプリはスマホから作物と地域を入力するだけで、防除暦、栽培カレンダーが自動表示。実際の栽培記録はタップ一つで登録可能。自社の「農薬検索データベース」「かんたん農薬希釈計算アプリ」と連動しているので、散布したい農薬をいれればラベルをみなくとも希釈計算も可能で、散布回数もカウントしてくれます。また自分の使っている農薬を登録するだけで、混用が可能な農薬もわかります。
地方自治体から発表される予察情報も反映しているので、農家の防除に役立つアプリです。ダウンロードも不要で、ID登録だけですべての機能が無料で使えるアプリです。ぜひ一度使ってみてください。